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爽やかな陰険野郎

昔話をします。

僕はまわりと比べて賢い子供でした。
礼儀作法が完璧で、大人びた言葉を使い、学校の勉強では1,2位以外をとったことがありません。それゆえ大人たちからは褒められることが多く、近所でも評判の優等生でした。

最も、それは僕自身の才能や努力によって得られたものという訳ではなく、しょっちゅうヒステリックを起こして、顔を合わせるたびに、理由もなく僕を2,3時間怒鳴り続ける母と、ほとんど家に帰らず妻ではない女と遊びまわってる中年の父から、自分の心と体を守るためにそうならざるを得なかっただけなのです。
たまに父と会うと、頭からビールをかけられたり、真夜中に家の外に締め出され、家から車で一時間弱かかる所に住んでいる祖母が助けに来てくれるまでそのまま放っておかれることが多々ありました。僕の幼少期の記憶はそんなものばかりです。楽しかった記憶はありません。

毎日のように否定の言葉を投げかけられた子供は、大抵の場合、全てに対して臆病になるか、大人に対して酷く従順になります。僕は後者でした。僕が成長して、両親と喧嘩しても負けないくらいの体格になるまで、大人から言われたことにNOと言ったことはありませんでした。皮肉なことに、そういう風に過ごしていると人生は上手くいくようでした。

中学3年生になり、背も伸び力もつき、知恵も回るようになったころ、僕の理解者を自称する人たちからよく、「不真面目になったね」とか「変わっちゃったね」と言われました。
僕からしたらそんな言葉を投げかけてくるやつは、他人に対して全く興味を持ってない、外面ばっか気にした、クソキモい自己満野郎です。モノをくれるわけでもなく、助けてくれるわけでもなく、傍から心配してる風の言葉を投げかけるだけならば、正直言って消えてほしかったです。勝手に「可哀そうな子」というレッテルを貼ってくるのは、無関心よりも悪辣でした。

この頃から僕は少しづつ自分の意見を表明できるようになりました。自分の考えたことを喋り、自分のしたいことをして、自分の行きたい場所に行く。それが出来るようになって僕は段々と息詰まることが減り始めました。勿論、良い面ばかりでは無く、友達との言い合いやや喧嘩が増えました。素行面で多少の問題があると言われるようになり始めました。
それに比例するように周りから「変な奴」と言われるようにもなりました。「あんな子がいて、両親は恥ずかしいね」と一部の心無い人から言われました。
僕は他人にあるべきものがない恥ずかしい子供だったようです。このころに植え付けられた劣等感が未だに消えていません。どうせ僕はキモくて友人の少ない、人との距離感を計れない、何考えてるか分からない、陰険な奴です。

でも、僕はこうも思います。「そんな陰険野郎を気にして、あまつさえ『恥ずかしいね』だとか言っちゃうような奴はもっと陰険なやつなんじゃないか?」と。
僕はこの世の中で、最も底辺の価値の人間ですが、そんな人間を気にしてる時点で、同等かそれ以下の価値なんじゃないかと。普通の人間は道端の石や蟻に気を向けません。だって気にする意味もあまりないですから(僕は気にするタイプの人間ですが)。
それじゃあ僕みたいな路傍の石を気にするのは僕と同じ石か、それよりも小さいバクテリア程度の物なんじゃなかろうかと。僕はネガティブな陰険野郎ですが、あいつらよりは爽やかな陰険底辺野郎です。

生きる原動力が怒りでも果てしない劣等感だったとしても、生きている以上は皆、同じ土俵に立っています。どうせいつか死ぬんですから、三日後に死のうが、百年後に死のうが、大した違いはありません。強かに生きていきます。

ありがとうございました。

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